屋根や外壁塗装の後の乾燥期間は、夏はわずか数時間ですが、冬は一日を要します。この乾燥期間が短いと、高品質な塗料を使っても早く汚れたり、塗膜に亀裂が入ったりするリスクが高まります。塗料が完璧に乾燥するまでの工程は、職人の熟練度に左右される重要な要素です。
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塗料の乾燥時間は「仕上がり」「性能」「耐用年数」に影響する
外壁塗装や屋根塗装は、塗る前の下地処理がとても大切な工程です。表面の汚れを高圧洗浄で落とし、傷んだ箇所を補修する下地処理をすることで、塗料がしっかりと密着するからです。
そのほかにも、塗った塗料を乾燥させる時間も、仕上がりや性能に大きく影響していることをご存知でしょうか。
下塗りに用いる塗料、中塗りや上塗りをする塗料というように、それぞれに適した塗料があります。種類ごとに異なる乾燥時間をきちんと守ることで、その上から重ねる塗料の仕上がりが変わってきます。「乾燥時間を守ること」で、塗装工事の全体の質が変わると言ってもいいでしょう。
また、同じタイプの塗料でもそれぞれの製品ごとに乾燥時間は異なり、詳しくは各メーカーが作成したカタログや仕様書、施工手順書などに記されています。塗装時には、メーカーが推奨する乾燥時間を満たしてこそ、期待できる性能をクリアできる仕上がりが得られるのです。
塗料は「半製品」と言われています。それは、メーカーで製品化した「塗料」、製品となった塗料を正しく塗る「職人」との両者が合わさってこそ、“塗装”が仕上がるからです。どんな優れた高機能な塗料を選んでも、その先にある塗装方法や乾燥時間が間違っていれば、仕上がりは完全なものとはならないでしょう。
メーカーが規定している塗料の乾燥時間(日本ペイント・パーフェクトシリーズの場合)
※日本ペイントパーフェクトシリーズカタログpdfより引用
本来、お客様が仕上がりにご満足いただけるよう塗装業者が正しい工程を守ることは当然のことです。しかしながら、乾燥時間を省略している、いわゆる“手抜き工事”となっている業者も少なからずいます。時間に追われるように作業している職人さんを見ると「一生懸命働いてくれている」と感じるかもしれませんが、こういった業者の場合、「次の現場に行きたいから、早く終わらせようとしている」可能性もあります。
塗装工事の際、乾燥時間の手抜きを見抜くためにも、おおよその乾燥時間を知っておくことも大切です。
乾燥時間は絶対守るべき?乾燥時間の不足により起こる不具合とは?
乾燥時間を守らなければ、後々、それが原因で不具合を起こすことがあります。
ただ、最近の塗料開発は優れているため、乾燥時間を守らずに上から重ね塗りをしても、すぐには不具合が起こりません。熟練の塗装職人が見ても分からないほどで、詳しく専門的分析を行わなければ、乾燥時間の省略には気づけないでしょう。
「乾燥時間を守った塗装」と「乾燥時間を守らなかった塗装」による違いが分かるのは、数年後も先のことなのです。
お客様は、塗装の最中にずっと張り付いて見ているわけにもいきません。そのため、誰も見ていないことをいいことに、「塗ってしまえばこっちのもの」とでも言うかのように乾燥時間を短く終わらせる、あくどい業者も出てくるのです。 これでは、塗料本来の性能や耐久性を発揮できません。半製品を完成品にできるのは、お客様にご満足いただくため、しっかりと乾燥時間を守って作業する業者だけなのです。
【不具合事例】乾燥時間を守らずに起こった塗料の不具合
1. 数年後に急激に艶がなくなった・色褪せが見られるようになった
2. 耐用年数の半分程度の年数なのに水切れが悪く、湿っている感じがする
3. 数年前に塗装したばかりなのに外壁が汚れている
4. 塗装してからまだ数年、なのに塗膜にひび割れ・剥がれが出てきた
どんな外壁も、経年により、これらの劣化症状は見られるかと思います。耐用年数に満たなくても、立地的に自然環境が厳しいケースでは、劣化は早くに起こりやすいです。
乾燥時間が足りずに数年後に起こった不具合なのか、それとも環境が原因なのか…。どちらが原因なのかは、実のところ明確に判断はできないのです。保証期間が極端に短い、そもそも保証制度がまったくないなどの業者の場合、手抜き工事や施工不良を起こされる可能性も考えられます。
乾燥時間のカギを握る温度
重ね塗りが可能な乾燥時間は数時間から丸1日
塗料の乾燥時間は、メーカーにより目安が定められています。製品によって、推奨される時間は大きく異なります。同じ塗料を使用した場合でも、適切な乾燥時間は「夏なのか・冬なのか」「湿度はどれくらいか」など、気候で大きく異なるのです。
洗濯物をイメージしてもらえば分かると思いますが、気温が高い夏の季節なら数時間程度で乾きます。しかし、冬のように日照時間が短く気温も低い日は、24時間程度の時間を置かなければ乾きません。気温によって乾燥時間が左右されるため、外壁塗装は春から秋が向いているとよく言われるのです。
作業人員の数や塗装面積にもよりますが、日照時間も長く気温が上昇する夏なら、1日で下塗りと中塗りまで済ませることもできます。しかし、冬の場合、ひとつの工程に1日かけなければいけないため時間がかかってしまうのです。
また、「気温5℃未満」や「湿度85%以上」という条件の場合、塗装に不具合が出る可能性が大きいです。そのため、塗装は基本的に行わないことも頭に入れておくといいでしょう。
「下塗り・中塗り・上塗り」の各工程必要な乾燥時間とは?
次に、代表的な塗料を例に、「下塗り・中塗り・上塗り」の工程で理想的な乾燥時間を見てみましょう。また、「水性」「1液型溶剤」「2液型溶剤」でも乾燥時間に違いがあるのかを比較していきます。
・外壁塗装は、窯業系サイディングで水性塗料と1液型溶剤塗料を使った場合
・屋根塗装はスレート(コロニアル・カラーベスト)屋根で2液型溶剤塗料を使った場合
上記2点について、「気温23℃の状態で使用塗料は日本ペイントのパーフェクトシリーズ」という共通の条件にて比較してみましょう。
パーフェクトトップ(水性)で外壁塗装
ファインパーフェクトトップ(1液型溶剤)で外壁塗装
ファインパーフェクトベスト(2液型溶剤)で屋根塗装
カタログ等を見ると、いずれの場合も乾燥時間は3時間以上と記載されています。違う製品や種類なのに乾燥時間が同じなのは、メーカーの努力が関係しています。
「外壁の種類」によって、使うべき塗料も異なります。しかし、慣れない塗料による施工不良を防ぐため、メーカー側も塗料の研究開発をしているのです。
日本ペイント・パーフェクトシリーズの規定乾燥時間
※日本ペイントパーフェクトシリーズカタログpdfより引用
次の塗装までに時間が長すぎるのもNG
ファインパーフェクトベストにおいて、「3時間以上、乾燥させたら7日以内に次の重ね塗りをしてください」と下塗りと中塗りの工程についての記載があります。
高い密着力を持つ塗料は、乾燥時間が長いことは、その間「埃や塵がつき塗装に適さない結果になる」というリスクを含んでいるからなのです。
日本ペイント・ファインパーフェクトベストの規定乾燥時間
※日本ペイントファインパーフェクトベストカタログpdfより引用
半製品の塗料は、塗った後も大事
そもそも塗料の目的は、外壁や屋根に塗膜を作って雨風や紫外線からお住まいを守ることです。「塗る⇒乾燥する⇒塗膜が形成される⇒建物を保護する」という一連の流れを経てこそ、本来の塗料が完成します。出荷時は“半製品”としか言えません。
また、塗るときの工程も簡単ではありません。下塗り後の乾燥時間、中塗り後の乾燥時間というように、「どのくらい乾燥させてから次の工程に進むか」も非常に重要な工程となっています。乾燥させれば大丈夫と考え、次の工程に進むまで期間が空きすぎてもいけません。
また、塗料の希釈率・配合率(2液型塗料)・ポットタイム(2液型塗料)も細心の注意を払って管理しなければなりませんし、天候や温度、湿度といった部分も塗料の質や塗装後の完成度に関わってきます。
経験や知識が不足している業者や、費用削減のため手抜き工事をするような業者に塗装を依頼してしまうと、半製品の塗料は不完全な仕上がりとなります。塗装という仕事に真摯に向き合う誠実な気持ちも、塗装工事にはとても大切です。それら、すべてを持ち合わせた優良な業者の手によって施工されて初めて、半製品の塗料が「完成品」となって仕上がると言えるでしょう。
乾燥時間をアバウトにしている業者が塗装しても、一見、塗れたように思えても不完全な仕上がりのため、その後の耐久性は期待できません。
塗膜の乾燥段階の呼び方とは?
塗膜には、乾燥が進む段階に分けて、呼び方があります。ここでは、乾燥段階の状態を4段階に分けて詳しくお伝えしていきます。
[第1段階]指触乾燥
塗装面に、指の腹(爪ではない)で軽く触れた程度で塗料が付着してこない状態です。乾燥したてと言える初期状態ですから、まだまだ重ね塗りはできません。
[第2段階]半硬化乾燥
塗面を軽くこすり、跡ができないくらいの状態です。この段階では、重ね塗りをすることができます。
[第3段階]硬化乾燥
塗膜に指の腹(爪ではない)を押し当てて圧迫しても、指紋がつかないくらい乾燥した状態です。表面はもちろん、塗膜の内面でも乾燥が進んでいます。
[第4段階]完全乾燥
乾燥が塗膜の内部まで進めば、完全乾燥した状態です。表面も内部も完全に乾き、薬品などの酸やアルカリへの耐性もできます。
本当の意味での乾燥は半年から1年後?
本当の乾燥は、なんと「半年から1年後」…という面白い話もあります。
日本ペイント「サーモアイシリーズ」、脅威の耐用年数を誇る「スーパーセランシリーズ」についてですが、塗装工事が終わった直後よりも1年経った方が光沢保持率(塗面に光を当てたときの反射率の計測)が高いという結果とのことです。
メーカーによるアナウンスでは、スーパーセランシリーズが完全に硬化するまでには約6ヶ月かかるとのこと。それまでの間は、汚れやすい状態で、光沢についてもやや劣ると発表しています。
塗装業者のなかにも、「塗装してから1年後に塗料の性能が発揮できる」と言う人もいます。
塗料の“乾燥”のメカニズムとは?
塗料は、どのようなメカニズムで乾燥していくのでしょうか。洗濯物の乾燥と同様に、水分(溶剤)が蒸発して乾燥する塗料もあります。一方で、化学変化により塗膜を形成するケースもあります。
大きく分けると、塗料の乾燥は「融着乾燥」と「重合乾燥」というメカニズムに分けられます。
融着乾燥
融着乾燥は、化学反応をともなわない乾燥です。
塗料のなかの水と油(溶剤)が蒸発するとき、均一に分散していたエマルジョン同士が近付き融着、その連続で塗膜が形成されます。
重合乾燥
重合乾燥は、2液型塗料に見られる乾燥のメカニズムです。塗料に硬化剤が入ると塗膜の樹脂素材が化学反応を起こします。結合により分子量も増え、強い塗膜が形成できます。
塗装工事は、何日もかけて行われます。職人さんのなかには、「本日は気温が高いので、〇時間ほどで乾きます」など天候や塗料に関する報告をする方もいらっしゃいます。これは、職人さんの感覚だけではなく、科学的な根拠によるものなのです。
毎日のように工事があると、「もうどのくらいで終わるのだろう?」「進捗状況が分からないのだけれど」という疑問が多いかもしれません。ストレスを抱え込まないためには、進捗状況からある程度の予想ができれば安心と言えるでしょう。
街の外壁塗装やさんでは、お客様にご安心いただくために、塗料や天候に則った進捗管理や乾燥時間の管理を徹底しています。工事期間中、ご不安な点や、気になる事、疑問点などがあれば、お気軽にご相談ください。
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下塗り・中塗り・上塗りの工程の期間、重ね塗りをするまでの乾燥時間はとても重要です
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乾燥時間が足りない結果、「色褪せ」や「艶がなくなる」などが起こります。塗膜で保護できないため、劣化しやすく、塗料ごとに想定されている耐用年数よりも短くなります
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塗装では、乾燥時間に気温が大きく影響します
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下塗り・中塗り・上塗りの工程では、塗料ごとに乾燥時間が異なります
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気温が23℃のケースでは、人気のパーフェクトシリーズの乾燥時間は水性・1液型溶剤・2液型溶剤、いずれも3時間程度です
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逆に乾燥時間が長すぎて、重ね塗りまでの期間が長すぎるのもNGです
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本当の乾燥は、塗装が終わって半年から1年というデータもあります
- 外壁塗装や屋根塗装の塗料は、乾燥時に塗膜を形成される場合、融着乾燥や重合乾燥というメカニズムがあります